金魚釣り ①
夏休みになっても、やることがいっぱい有る悪がき3人。
今日は金魚釣りに行こう。
一つ年下のとしお君を連れて行くことになった。
屋号が「かみゑん」という、商売をしていたのだろう看板が有った。
私は「かみるえん」と読んでいたいた。
この「ゑ」の字、似た様なので「ゐ」の字も有る
好きな字である。
さてこの次男坊、肝っ玉が据わっている。
8月のお盆である。
どうしてお盆というと、農家が休みになるからだ。
山の中腹を横切る山道を歩くこと一時間。
隣り村の田んぼの最上段の堤を目指して片手には釣竿とバケツ、
どうしても、もう一方の手には棒切れを持つ。
これで伸びた草の頭、木の葉っぱを叩き切りながら歩く。
餌と予備の針、錘は「かくし」の中。
かくしとはポケットの事である。
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絵:年金酒場さん |
木々で覆われた農道を抜けると、辺りがパッと明るくなり棚田が下に広がる。
田んぼの最上段に目的の堤が見えてきた。
上の堤は少し大きい、深さは60cm、錦鯉が10尾程泳いでいる。
近づくと奥の暗いほうに全部逃げていった。
大きさは50cm程だが「細い」痩せている、水が冷たく餌がないのだろう。
脇に水の取り入れ口が有りチョロチョロ流れ込んでいる。
「ヒャッコイ」と新人が叫ぶ。
木の棒に逆さに挿してあるカンカラで順番に水を飲む。
「ゥンメー」。
下の堤は少し小さいが深い。2mは有る。
上の堤から少しずつ水が流れ込んでいる。
中央に3m位の金魚草の塊が有り、この中を行ったり来たりする金魚が見えた。
「いたいた」、「真っ黒いデメキンもいるよ!」、「うわー!中にいっぱいいるよ」。
水は透明で底まで見える。
メリケン粉を水で溶く手が震える。
餌は「メリケン粉」と「こしひかり」。
釣り竿に仕掛けを巻き付けてあるので支度は早い。
最初に釣り上げたのは、あの新人。
「ウワー、やっぱり、ゐかったー、
今日はこしひかりに味の素をかけてきたんだー」
得意げにしゃべる。
「俺にもくれよー」 飯粒をつける。
半分にした方が金魚の口に合うのか立て続けに釣れる。
それともコシヒカリと味の素の威力がすごいのか。
ハヤ釣り用の針、当時は今のタナゴ針なんかは無かった。
何を釣るにもハヤ針である。
それぞれ5匹前後釣った所で釣れなくなった。
「そろそろ帰ろうかー」
新人だけは粘る。どうしてもデメキンを釣ると頑張っている。
そこに田んぼの持ち主、水を見に来たのであろう。
ナタを振り上げ、「やゑんども、なにしてるー!!」と
叫びながら走って近づいてくる。
叱られ始めた。
でもこいつだけはまだ竿を出している。
「もうちょっとまってー、今釣れるところだからー」
全員、唖然。
散々怒られ、結局、全部堤に放され帰って来た。
このとしお君20代で事故で亡くなったと聞いた。
生きていたら大物になったに違いない。
反省が無い、来年は12日(お盆真っ最中)に行くことにしよう。である。
帰ってきて先輩に話した。
叱られても昔は一尾づつは持って帰っていいと言ったんだがなー。
理由が有った。次回へ
追記、
今日は寒い 現在1.1度C
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