2013年1月18日金曜日

金魚釣り ①

日本田舎話  34

金魚釣り ①

夏休みになっても、やることがいっぱい有る悪がき3人。

今日は金魚釣りに行こう。
一つ年下のとしお君を連れて行くことになった。
屋号が「かみゑん」という、商売をしていたのだろう看板が有った。
私は「かみるえん」と読んでいたいた。
この「ゑ」の字、似た様なので「ゐ」の字も有る
好きな字である。

さてこの次男坊、肝っ玉が据わっている。

8月のお盆である。
どうしてお盆というと、農家が休みになるからだ。
山の中腹を横切る山道を歩くこと一時間。
隣り村の田んぼの最上段の堤を目指して片手には釣竿とバケツ、
どうしても、もう一方の手には棒切れを持つ。
これで伸びた草の頭、木の葉っぱを叩き切りながら歩く。

餌と予備の針、錘は「かくし」の中。
かくしとはポケットの事である。


絵:年金酒場さん

木々で覆われた農道を抜けると、辺りがパッと明るくなり棚田が下に広がる。
田んぼの最上段に目的の堤が見えてきた。
上の堤は少し大きい、深さは60cm、錦鯉が10尾程泳いでいる。
近づくと奥の暗いほうに全部逃げていった。
大きさは50cm程だが「細い」痩せている、水が冷たく餌がないのだろう。
脇に水の取り入れ口が有りチョロチョロ流れ込んでいる。
「ヒャッコイ」と新人が叫ぶ。
木の棒に逆さに挿してあるカンカラで順番に水を飲む。
「ゥンメー」。

下の堤は少し小さいが深い。2mは有る。
上の堤から少しずつ水が流れ込んでいる。
中央に3m位の金魚草の塊が有り、この中を行ったり来たりする金魚が見えた。
「いたいた」、「真っ黒いデメキンもいるよ!」、「うわー!中にいっぱいいるよ」。
水は透明で底まで見える。

メリケン粉を水で溶く手が震える。
餌は「メリケン粉」と「こしひかり」。

釣り竿に仕掛けを巻き付けてあるので支度は早い。
最初に釣り上げたのは、あの新人。
「ウワー、やっぱり、ゐかったー、
今日はこしひかり味の素をかけてきたんだー」
得意げにしゃべる。

「俺にもくれよー」 飯粒をつける。
半分にした方が金魚の口に合うのか立て続けに釣れる。
それともコシヒカリと味の素の威力がすごいのか。

ハヤ釣り用の針、当時は今のタナゴ針なんかは無かった。
何を釣るにもハヤ針である。

それぞれ5匹前後釣った所で釣れなくなった。
「そろそろ帰ろうかー」
新人だけは粘る。どうしてもデメキンを釣ると頑張っている。

そこに田んぼの持ち主、水を見に来たのであろう。
ナタを振り上げ、「やゑんども、なにしてるー!!」と
叫びながら走って近づいてくる。

叱られ始めた。
でもこいつだけはまだ竿を出している。

もうちょっとまってー、今釣れるところだからー

全員、唖然。

散々怒られ、結局、全部堤に放され帰って来た。

このとしお君20代で事故で亡くなったと聞いた。
生きていたら大物になったに違いない。

反省が無い、来年は12日(お盆真っ最中)に行くことにしよう。である。

帰ってきて先輩に話した。
叱られても昔は一尾づつは持って帰っていいと言ったんだがなー。


理由が有った。次回へ




追記、
今日は寒い 現在1.1度C

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