2012年12月16日日曜日

屁っこき虫 21

日本田舎話 21

へっこき虫の道案内

屁をする虫がいる。不思議である。
暑い、暑ーい夏

乾いた砂利道、中央が少し盛り上がり左右が耕運機でへこんだ農道。
暑さで中央に寄せられた砂利の間の草も枯れかけている。
陽炎が道の先に時折見える。真昼の蝉も熱さのせいか鳴くのを止めている。

そんな中、ランニングシャツも汗でびっしょり、日焼けした真っ黒な腕、手にはタモ網。
子供の頃は元気である。
こんな道に悪がきども、たまに通るオニヤンマを捕まえる為に
わざわざ来たのである。
オニヤンマは捕まえそこねても、我慢して待っていれば必ず又通る。
ゆっくり歩きながら農道(山道)を登る。
するとこの「へっこき虫」が必ずいる。


もうちょっと茶色だった。湿った道、日陰の道にはいない。
絵:年金酒場さん

「お前たち、何しに来たんだ。俺の縄張りに来るんじゃやない!。」
と言っているようだ。
一メートル程近づくと、五メートル程先にちょんと降りる。
又近づくと同じ事をする。こいつは決して諦めようとしない。

その気ならっと、タモ網で捕まえる。
そして、足で軽く踏むか、棒の先で軽く叩くと「プッ」と屁をする。
黄色っぽい白煙の粉を出す。鉄の粉を燃やしたときのような臭い、酷くは無い。
叩くたびに屁をする、本当におもしろい。
5回くらいはするだろうか、段々量が少なくなり
最後に出なくなる。
「どうだ参ったかー」で離してやる。

近年は余り見なくなった。農道も舗装されたせいなのだろう。

新潟にイワナ釣りに行った時、こいつが居た。
コンクリートの山道、時折砂利道。(何故かアスファルトにはいない)
両脇は草で生い茂り、車もやっと通れる道。
上流に行こうと歩いていたら足元からパッと飛び発ち、サッと降りた。

降りて、こっちに向き直した。
今度は、こいつのしゃべっている言葉が違っていた。
「お前たち、こんな山の中、何処へ行くんだ、。俺が案内してあげるよ」
聞こえた。
だから「みちしるべ」とも言っていた。

子供の頃が垣間見えた。

脅かさないようにゆっくり歩きながら。
「よろしく頼む、釣れる所まで」と心の中で頼んでいた、、。

きっと昔の人も、こいつと話をしながら歩いたに違いない。


0 件のコメント: