2012年12月18日火曜日

犬とヘビ 22

日本田舎話

犬とヘビ

犬の知恵と俺達の知恵。

私は血統書付きの悪ガキだった。

「山へ行ってんで来い!、ゴゴゴロしてーで!」 お袋の声。
 山奥で育っているのに、この言葉。

隣の犬を借り、途中、友達の高士君を誘ってテクテク歩く。
目的は何も無い。
細い山道を歩き、まだ熟していない食べられないと
分かっている山葡萄の実を採り、一粒、口の中へ。
「スッペ」
直ぐに「ぺッ」っと吐き出す。青臭さと渋さが残る。
これを繰り返す。
3、4粒程のところで捨てる。
今度は舌が痺れてくる。数時間は痺れている。

人の通らない山道を外れ、木々の中へ。
地形は分かっている。
小さい頃から先輩に連れられて来ているから、迷子なんてことはない。
枯れ枝を持ちながら、草木をタタキ、当ても無く歩く。
倒れている木が有ればそれに乗り、端から端まで歩く。
低く斜めに成っている木が有れば必ず上る。

、、と、連れて来た犬がヘビを見つけ「ワンワン」始まった。

この悪がき(俺達)、ヘビを見れば必ず殺す。持っている棒で伸びるまで叩く。
シッポ掴んで地面に叩きつける。
どうだ俺の勇気を見たか」と言わんばかりだ。
これも遊びの一つ。
マムシには会ったことが無いが「ヤマカガシ」にはちょちょく会う。
コブラほどではないが、怒ると頭から腹に掛け平らになる。
色は綺麗だ。最近、こいつにも毒が有ると知った。
当時知っていたら逃げていただろう。

絵:年金酒場さん


 この時は違っていた、犬だ。
この犬、吠えたと思ったらいきなりヘビの胴体に喰らいつき
うなりながら、首を思いっきり左右に振る。早い。
ヘビの頭とシッポは地面に叩きつけられる。
つかの間、ヘビはぐったり。口から離した犬、ヘビが少し動くと又喰らいつく。
完全に伸びるまで繰り返す。もう伸び伸び。
もう諦めたと思い、藪の中へ放ると又拾ってきて目の前で始める。

やっと離して、先っきの俺達の話みたいに
「犬の勇気、見たかー!」と言わんばかりに
舌を出しハーハー言いながら、首を高く上げ誇らしげに こっちを見る。

この頃の俺達の知恵は犬と同じだったのだ。

果たして都会の犬はこんな事をするのだろうか。

後に、犬は「マムシ」に咬まれても、顔が腫れるだけで死なないと聞いた。


0 件のコメント: