犬とヘビ
犬の知恵と俺達の知恵。
私は血統書付きの悪ガキだった。
「山へ行って遊すんで来い!、ゴゴゴロしてネーで!」 お袋の声。
山奥で育っているのに、この言葉。
隣の犬を借り、途中、友達の高士君を誘ってテクテク歩く。
目的は何も無い。
細い山道を歩き、まだ熟していない食べられないと
分かっている山葡萄の実を採り、一粒、口の中へ。
「スッペ」
直ぐに「ぺッ」っと吐き出す。青臭さと渋さが残る。
これを繰り返す。
3、4粒程のところで捨てる。
今度は舌が痺れてくる。数時間は痺れている。
人の通らない山道を外れ、木々の中へ。
地形は分かっている。
小さい頃から先輩に連れられて来ているから、迷子なんてことはない。
枯れ枝を持ちながら、草木をタタキ、当ても無く歩く。
倒れている木が有ればそれに乗り、端から端まで歩く。
低く斜めに成っている木が有れば必ず上る。
、、と、連れて来た犬がヘビを見つけ「ワンワン」始まった。
この悪がき(俺達)、ヘビを見れば必ず殺す。持っている棒で伸びるまで叩く。
シッポ掴んで地面に叩きつける。
「どうだ俺の勇気を見たか」と言わんばかりだ。
これも遊びの一つ。
マムシには会ったことが無いが「ヤマカガシ」にはちょちょく会う。
コブラほどではないが、怒ると頭から腹に掛け平らになる。
色は綺麗だ。最近、こいつにも毒が有ると知った。
当時知っていたら逃げていただろう。
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絵:年金酒場さん |
この時は違っていた、犬だ。
この犬、吠えたと思ったらいきなりヘビの胴体に喰らいつき
うなりながら、首を思いっきり左右に振る。早い。
ヘビの頭とシッポは地面に叩きつけられる。
つかの間、ヘビはぐったり。口から離した犬、ヘビが少し動くと又喰らいつく。
完全に伸びるまで繰り返す。もう伸び伸び。
もう諦めたと思い、藪の中へ放ると又拾ってきて目の前で始める。
やっと離して、先っきの俺達の話みたいに
「犬の勇気、見たかー!」と言わんばかりに
舌を出しハーハー言いながら、首を高く上げ誇らしげに こっちを見る。
この頃の俺達の知恵は犬と同じだったのだ。
果たして都会の犬はこんな事をするのだろうか。
後に、犬は「マムシ」に咬まれても、顔が腫れるだけで死なないと聞いた。
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